アルバムレビュー

Remain Sane (リメイン・セイン)

チェコ出身のストレートエッジ・ハードコアバンドの4曲入りのデビューEP。Ebullition Records(エヴシューリョン・レコーズ)のコンピ『XXX – Some Ideas Are Poisonous』に触発され結成されたバンドで、レーベル・オーナーであるKent McClard(ケント・マクラード)の<ストレート・エッジは有毒なアイデアで、あなたの人生を破壊する。そして疎外感を残す。致命的なアイデアだ。>という、ストレートエッジになると、セックスや酒やドラッグという、この世の楽しみや快楽を止めることになり、孤独を覚悟しなければならないという考えに影響され、バンドを始めたそうだ。

尋常でない怒りの怒声ボーカル、COCOBAT(ココバット)のように複雑なリズムをザクザク刻むギターのリフ、ミディアムテンポで言葉の重さをじっくりと聴かせるドラム、ここで展開されているサウンドは、90年代の初期Downcast(ダウンキャスト)の影響が強いスクリーモよりのポスト・ハードコア。

歌詞は、<痛みを理解すると本物になる>や、<私が探し求めているのは何か?>、<信念を貫くことがどれほど難しことか>など、挫折で挫けそうになったり、快楽や誘惑に負けそうな弱い自分との闘いなど、内省的な内容が多い。まるで厳しい修行で心身を厳しく鍛錬する僧侶のように心理を求道するストイックなストレートエッジ・ハードコアだ。

90年代のスクリーモよりのポストハードコアで、ノスタルジックでオリジナリティーこそ希薄だが、ストイックな気迫は尋常でない決意の強さを感じるバンドなのだ。

SKILL ISSUE(スキル・イシュー)
『TOTAL DOOM (トータル・ドゥーム)』

フィラデルフィア出身のハードコア・バンドのデビューEP。パワーバイオレンスとノイズコアを合わせたような暴力的なサウンドのハードコアを展開しているバンド。

SOUL GLO(ソウルグロウ)など近年良質なハードコア・バンドを輩出しているフィラデルフィア・ハードコアの流れをくむバンドで、尋常でない怒りや暴力的な激しい衝動が魅力的。荒々しく扇情的で歪みまくったギター、怨霊のようなデス声のボーカル、スローテンポから突如激しくスピーディーに変わるドラム、録音状態の悪さがハードコアの魅力を存分に引き出した、荒々しく迫力のあるぼく力的なサウンド。まさにノイズコア系のパワーバイオレンスといえるバンドだ。

歌詞は、<憎しみが燃え上がり心を癒してくれる>とか、<憎しみが私の燃え上がりを癒す。偏屈者の心臓を切り裂く>とか、憎悪に満ちた破壊願望が多い。

まさにハードコアらしい怒りと憎しみと破壊衝動に満ちた作品。メタル色が一切ないノイジーで歪みまくったサウンドのパワーバイオレンスなのだ。

Dead Bars(デッド・バーズ)
『Sinkhole EP(シンクホールEP)』

シアトル出身のメロディック・パンク・バンドの2作目のEP。初期のころはRancid(ランシド)の影響の強いサウンドで、デビュー作の『Dream Gig(ドリーム・ギグ)』では、Ramones(ラモーンズ)やMisfits (ミツフィッツ)の影響が色濃い、8ビートのパンクな作品だった。そして出世作となった『Regulars(レギュラーズ)』では、Dinosaur Jr (ダイナソーjr)ばりのノイズポップなギターで、メロディックなイントロフレーズが印象に残る作品であった。バラード曲などもあり、アルバムを重ねるごとに、よりポップにメロディーが円熟味を増していった。

そして今作では、黄昏たメロディーから、アコースティックギターのポップな曲など、さらにメロディックな方向に幅を広げた。相変わらず熱い想いを、がなり上げるスタイルのボーカルは健在で、そこにスローな曲から、屈折したポップ感などを取り入れ、より甘酸っぱい青春ぽく仕上がっている。

いままで間違った場所で愛を探しているだとか、報われない恋について歌ってきた彼らだが、今EPでは、<陥没穴で死ぬつもりだ>とか、自暴自棄になっている内容が目立つ。相変わらず愛のために惨めな思いをするラヴシックな内容が多い。

もてない男のコンプレックスや屈折した青春と甘酸っぱさなど、前作以上にポップで青春度が増した作品。アメリカのスクール・ドラマのようなエネルギッシュさを感じる、いまどきのメロディック・パンク・バンドらしい作品だ。