アルバムレビュー

velocity(ベロシティ)
『DEMO 2023』

インディアナ州ブルーミントン出身のユースクルー・リバイバル・バンドの7曲入りのデビューEP。

ハードコアとパンクの中間にあるサウンドで、バリバリ響く不協和音なギターとヒステリックな怒声ボーカルが特徴のバンド。

CHAIN OF STRENGTH(チェーン・オブ・ストレングス)やTEN YARD FIGHT (テン・ヤード・ファイト)、YOUTH OF TODAY (ユース・オブ・トゥデイ)などのユースクルー・バンドたちからの色濃い影響を感じるサウンドだが、力強い韻を踏む女性ボーカルにOiを合わせるなど、velocity(ベロシティ)ではのかなり独特な曲がある。

ベースのChance(チャンス)のみストレート・エッジで、メンバー全員、ユースクルー・リバイバルやストレートエッジにこだわりがないようだ。だがユースクルーの古き良きサウンドスタイルを踏襲し、そこに女性ボーカルとOiコーラスを融合した、ユースクルー・リバイバルの新しい形であることに間違いはない。インディアナのバンドらしい新世代のユースクルー・サウンドなのだ。

Godsize(ゴッドサイズ)
『No Survivors (ノー・サバイバーズ)』

テネシー州ジョンソンシティ出身のメタリック・ハードコア・バンドの2作目のEP。初期のころはニューヨーク・ハードコアのIncendiary(インセンダイアリー)に似たミディアムテンポのメタリック・ハードコアだったが、今作ではIncendiary(インセンダイアリー)系のニューヨーク・ハードコアをベースに、南部のサザンロックを融合したハードコアを展開している。

メタリック・ハードコアのハンマーのように重く金属質なギターに、ザザンロックのザクザク刻むリフ、オリエンタルなギター・フレーズに、ニューヨーク・ハードコアの歌い回しが融合したサウンド。アメリカ南部のフレーズやリフをニューヨークのメタリック・ハードコアに取り入れた新しスタイルのハードコア。

その不幸はあなたにも訪れるかもしれないや、富裕層に好意的なハレルヤなど、この世の不公平や不条理を歌った歌詞は、今作では環境破壊などをテーマに、干ばつなど、人間が犯した自然破壊が人間の手には負えない不幸を生み出している不条理を歌っている。

ニューヨークハードコアから進化したメタリック・ハードコアの微妙に進化したサウンド。決定的な進化までとはいかないが、メタリック・ハードコアの進化を先に進めたバンドであることに間違いはない。

Remain Sane (リメイン・セイン)

チェコ出身のストレートエッジ・ハードコアバンドの4曲入りのデビューEP。Ebullition Records(エヴシューリョン・レコーズ)のコンピ『XXX – Some Ideas Are Poisonous』に触発され結成されたバンドで、レーベル・オーナーであるKent McClard(ケント・マクラード)の<ストレート・エッジは有毒なアイデアで、あなたの人生を破壊する。そして疎外感を残す。致命的なアイデアだ。>という、ストレートエッジになると、セックスや酒やドラッグという、この世の楽しみや快楽を止めることになり、孤独を覚悟しなければならないという考えに影響され、バンドを始めたそうだ。

尋常でない怒りの怒声ボーカル、COCOBAT(ココバット)のように複雑なリズムをザクザク刻むギターのリフ、ミディアムテンポで言葉の重さをじっくりと聴かせるドラム、ここで展開されているサウンドは、90年代の初期Downcast(ダウンキャスト)の影響が強いスクリーモよりのポスト・ハードコア。

歌詞は、<痛みを理解すると本物になる>や、<私が探し求めているのは何か?>、<信念を貫くことがどれほど難しことか>など、挫折で挫けそうになったり、快楽や誘惑に負けそうな弱い自分との闘いなど、内省的な内容が多い。まるで厳しい修行で心身を厳しく鍛錬する僧侶のように心理を求道するストイックなストレートエッジ・ハードコアだ。

90年代のスクリーモよりのポストハードコアで、ノスタルジックでオリジナリティーこそ希薄だが、ストイックな気迫は尋常でない決意の強さを感じるバンドなのだ。