Chicago Punk/Hardcoreシカゴ・パンク/ハードコア・シーンについて(1977-1984)

シカゴ・パンク後期(1983年から1984年)第二波

83年ごろになるとアメリカ全土のシーンと歩調を合わせるように、ハードコアの屈症なサウンドとアティテュードを持ったバンドが台頭し始めた。アメリカ全土のハードコア・バンドとの結束や、第一波のバンドたちのアンチテーゼを掲げ、Articles of Faith(アーティクルズ・フェイス)やRights of the Accused(ライツ・オブ・ジ・アキューズド)などのバンドが活動し始めた。どちらのバンドもNaked Raygun(ネイキッド・レイガン)やThe Effigies(エフィシーズ)のストイックな労働者階級的なアティテュードを否定した。どちらのバンドもBAD BRAINS(バッド・ブレインズ)やMINOR THREAT (マイナースレット)などのワシントンDCのハードコアに影響を受け、Articles of Faith(アーティクルズ・フェイス)の出現を境にシカゴのパンクシーンは、激しくスピーディーなハードコアに変貌を遂げていく。ここでは後期シカゴ・パンク/ハードコア・シーンを代表するバンドたちを紹介したい。

ARTICLES OF FAITH(アーティクルズ・オブ・フェイス)


出典:hardcore punk
バンドを始めた経緯は、ワシントンDCでBAD BRAINS(バッド・ブレインズ)のライブを見たとき、スピーディーで激しいサウンドに衝撃を受け、前身のバンドDirect Drive(ダイレクト・ドライブ)を解散し、Articles of Faith(アーティクルズ・オブ・フェイス)を結成したそうだ。Articles of Faith(アーティクルズ・オブ・フェイス)のサウンドのベースにあるのは、BAD BRAINS(バッド・ブレインズ)やMINOR THREAT (マイナー・スレット)、FAITH(フェイス)などのDCハードコア。荒々しくスピーディーなハードコアをベースに、暗く陰りのあるメロディーを加え、Articles of Faith(アーティクルズ・オブ・フェイス)らしい個性を確立していく。83年以降の後期になると、ファンクやレゲェ、ジャズなどを取り入れながらも、スピーディーで荒々しい勢いは保ちつつも技巧的に進化していく。左派リベラルで大学教授のボーカル、Vic Bondi(ヴィック・ボンディー)を中心に、革命共産党員のドラム、Bill Richman(ビル・リッチマン)別名Virus X(ウイルスX)など、知的階級層のメンバーが在籍。歌われている内容は、90年代ころの流行った大量に物資が消費され使い捨てられていく消費社会への批判。お金や物質的豊かさや出世という空しさよりも、平穏や、幸せといった、心の豊かさを求めた精神主義などを掲げていた。
 

RIGHTS OF THE ACCUSED(ライツ・オブ・ジ・アキューズド)


出典:Facebook
軽薄なパーティーバンドとして知られるRights of the Accused(ライツ・オブ・ジ・アキューズド)は、大人になりきれない10代の思春期特有のモラトリアムな精神を持ったバンドだ。彼らの最高傑作である84年に発売された5曲入りのEP『Innocence(イノセンス)』では、Discharge(ディスチャージ)やMINOR THREAT (マイナースレット)に影響を受けたスピーディーでファストなハードコアで、くだらない学校生活や信仰などのアイデンティティの問題、理想の大人像などについて歌っていた。青春を猶予されたモラトリアムがこのバンドの魅力だろう。その後、85 年になるとバンドはハードコアからメタルへと移行し、イノセントな純粋さは失われ、エロティックでワイルドな方向に向かっていった。
 

SAVAGE BELIEFS(サベイジ・ビリーフス)


出典:Bandcamp
SAVAGE BELIEFS(サベイジ・ビリーフス)は、82年から84年まで活動していたバンドで、ワシントンDCのハードコアバンド、Government Issue(ガバメント・イシュー)で活躍していたBrian Gay(ブライアン・ゲイ)を中心に、あとにBig Black(ビック・ブラック)で活躍するDave Riley(デイブ・ライリー)らのメンバーによって結成されたパンク・ロック・バンド。RAMONES(ラモーンズ)やMINOR THREAT(マイナー・スレット)やBIG BOYS(ビック・ボーイズ)からの影響の強く、荒々しサウンドながらもメロディーに重点を置いていた。扇情的なサウンドにアラブのエキゾチックなメロディーを加えるなど、ギターにこだわりを見せていた。歌詞は、“What’s Left In The Fridge?(冷蔵庫に何が残っていますか?)”や“Double Standard(ダブルスタンダード)”など、パーソナルな内容が多かった。また最後ライブでは、Savage Beliefs(スティーブ・アルビニ)が、「SAVAGE BELIEFS(サベイジ・ビリーフス)が解散すると聞いたとき、私は泣いたと」と、伝えたそうだ。
 

END RESULT(エンド・リザルト)


出典:Bandcamp
END RESULT(エンド・リザルト)は、79年に結成されたノイズ/エクスペリメンタル・ノーウェイブ・バンド。そのサウンドの実験性からか、BIG BLACK(ビック・ブラック)と仲のいいバンドで、85年にリリースされた 8曲入りのEP『Ward(ウォード)』では、BIG BLACK(ビック・ブラック)のベーシスト、Dave Riley(デイヴ・ライリ―)がプロデュースし、Steve Albini(スティーヴ・アルビニ)が運営していたレーベル、Ruthless Records(ルースレス・レコード)からリリースされた。パンクやハードコアから影響が全くなく、軽快な音色のギターで、シュールで不気味な世界を演出していた。シカゴのなかでも独特な立ち位置にいるバンドだった。